作品の魅力について
全ての作品は鉛筆などでの下描きを行いません。毛筆にて直接白い紙に描かれます。完成後、余分な部分をカットし、額装(もしくは軸装)します。額は絵に合わせて特別に製作されます。竹ペンなどは使用せず、羊毛のやわらかい筆で一気に描きあげ、何枚かの内一番良い物のみ額装され、他は処分されます。
同一作品は、額ともに存在しません。世界に一点しかない作品を提供いたします。
また作品により、純金泥、プラチナ泥、日本画の岩絵の具で一部彩色されます。画材はとても堅牢で千年近く褪色しません。これら全て自然が生んだ画材は澄んだ美しさを持ち、けばけばしくなく上品な色合いで飽きが来ることはございません。
紙は文革前の古い宣紙を用いますが、ハーネミューレ紙、キャンソン紙などヨーロッパの紙も使います。手漉きの最高級用紙はそれぞれに味わいがあり作風に合わせて使い分けると表現の幅が広がります。
日本画・水墨画の魅力
「余白の美」
洋画と日本画の違いはいろいろな文献やネットでも調べることができますし、技法や画材の違い、歴史的背景についてはここでは省略します。私にとっての日本画、水墨画の魅力の一つを紹介します。「余白の美」と呼ばれるものです。それは絵の中に何も描かれてない部分があるということです。白い紙のままであったり、たとえ絵の具が塗ってあっても具体的な物の色や形を示すものではないことが特徴で、他の絵画にあまり例のない、日本画、水墨画の表現の一つです。
なぜそこにこだわるかと言いますと、すべて手前から背景まで描きこんだ作品(洋画に多い表現)は、作者のメッセージがストレートに伝わります。人物画でも風景画でも描かれた部屋の光線の状況からその日の天気まで、画家がその絵を描くにあたってのねらいがそのまま見る側に伝わります。一方、日本画、水墨画などの余白のある作品は、その何も描かれていない部分に見る側が何かイメージしなくてはならなくなります。見ていて物足りなかったり、落ち着かなくなるからです。それこそ、私が日本画や水墨画の魅力と、とらえているのです。
ノートルダム寺院を墨で描いたとします。空の部分は紙のままにとどめ、真っ白のままとなります。しかし人間の脳は不思議なものでそこに空を感じ、空が見えてくるのです。ある人は青空を、ある人は今にも雨の降りだしそうな曇り空をイメージするかもしれません。それがいいのです。
だから見ていて飽きないのです。その日の気分で絵が違って見えます。見る方それぞれの感性で空の部分を想像していただく絵なのです。言い方を変えれば見る方の想像力で補われ、その絵は完成するのです。しかも見る人の数だけそれは存在します。私は日本画や水墨画を小さな子供に見せたいと考えます。子供の想像力のすばらしさに期待しているからです。
こう考えると日本画や水墨画に対して「歴史はあるけど古臭い地味な絵」というイメージが変わりませんか。これから日本画や水墨画をご覧になるとき「余白の美」を意識してご覧になられることをお勧めします。